「うちみたいな規模でも、ホームページって持っておくべきなんだろうか」——鳥取で小さく商売をされている方なら、一度はこんな考えが頭をよぎったことがあるかもしれません。その裏側にはたいてい、「そもそも周りはどれくらい持っているのか」という不安があるのではないでしょうか。よく引用される「企業のホームページ保有率は9割」という数字を見ると、なおさら気になるのではないでしょうか。実はこの9割という数字は、鳥取の中小・小規模事業者の実感とは大きくズレており、地方の小さな事業者に限れば実態は半分前後、あるいはそれ以下と考えるのが自然です。この記事では、公式統計と信頼できる民間調査を突き合わせ、鳥取の事業所構成に当てはめて「実質的な保有率」を推計しました。数値は出典を明記し、推計はあくまで推計として区別してまとめています。
この記事の要約
- よく引用される「企業のHP保有率9割」は従業員100人以上の企業限定の数字で、鳥取に多い小規模事業者の実態とは大きくズレています
- 民間調査では従業員5人以下の企業のHP保有率は3割台にとどまり、鳥取全体の実質保有率もおおむね5割前後、控えめに見ればそれ以下と推計されます
- まだ半分近くが持っていない今だからこそ、検索での見つけやすさや信頼の確認手段として差がつきやすいタイミングです
目次
「企業のHP保有率は9割」という数字のカラクリ
まず、いちばんよく見かける数字の出どころを確認します。企業のホームページ開設率としてメディアで引用されるのは、ほぼ総務省の「通信利用動向調査(企業編)」です。
令和6年の調査では、自社のホームページを開設している企業の割合は93.2%。産業別でも、情報通信業98.6%、金融・保険業97.0%、建設業95.4%と、軒並み9割を超えています。数字だけ見れば「今どきHPがないほうが珍しい」と思えてしまいます。
ところが、ここに大きな前提があります。この調査の対象は「常用雇用者100人以上の企業」なのです。つまり、ある程度の規模がある会社だけを集めた数字であって、日本の企業の99%以上を占める中小企業の実態を映しているわけではありません。鳥取で私たちが日々目にする、従業員が数人の商店や工務店、飲食店は、そもそもこの93.2%の母集団にほとんど含まれていません。
「9割」は、間違いではないけれど、地方の小規模事業者にとっては別世界の数字——そう捉えておくのが正確です。
総務省「令和6年通信利用動向調査報告書(企業編)」(調査対象:常用雇用者100人以上の企業)
中小・小規模に絞ると、保有率は半分以下に落ちる
では、規模の小さな事業者に絞ると、実際はどうなるのか。ここで参考になるのが、中小企業の経営者に直接聞いた民間調査です。
アイ・モバイル株式会社が2025年7月に中小企業の経営者3,000名へ実施した調査では、ホームページを「導入している」と答えた割合は48.2%にとどまりました。回答者の約6割が従業員5名以下という、より小規模の実態に近い構成での結果です。総務省の9割台と比べると、40ポイント以上の開きがあります。
さらに従業員規模別に見ると、差は歴然としています。51人以上の企業では9割弱が導入している一方、6〜10人では5割台、5人以下では3割台。つまり「小さい事業者ほどHPを持っていない」という傾向が、はっきり数字に出ています。
未導入の理由でもっとも多かったのは「固定の顧客・取引先しかいない」で23%。次いで費用面や、更新・管理への不安が挙がっています。「今の商売が回っているから、とりあえず必要ない」という感覚は、地方で堅実に続けてきた事業者ほど、むしろ自然なものだと思います。
アイ・モバイル株式会社「中小企業におけるホームぺージ活用実態調査」(2025年7月実施、経営者3,000名対象)

鳥取の事業所構成から「実質保有率」を推計してみる
ここからは、鳥取に当てはめて考えます。前提として、鳥取県で公式に「ホームページ保有率」を調べた調査は、私が探した限り見当たりません。だからこそ、全国データを鳥取の事業所構成に重ねて推計する意味があります。以下は私自身の推計であり、鳥取県が発表した数値ではないことを先に明記しておきます。
まず県内の事業者の数です。令和3年の経済センサスによると、鳥取県の民営事業所数は24,242か所。もっとも多いのは卸売業・小売業で、いわゆる地域密着の小さな商売が中心です。
次に規模構成です。全国で見ると、小規模事業者は285.3万で、全事業者の84.5%を占めます。しかもそのうち約5割は個人事業者です。人口・産業構造から考えて、鳥取はこの「小規模中心」の傾向が全国平均よりむしろ強いと見るのが自然でしょう。
この2つを組み合わせます。鳥取の事業者の大半は小規模で、小規模のHP保有率は全国調査で3〜5割。ということは、鳥取全体の実質的な保有率も、大企業前提の93%ではなく、おおむね5割前後、控えめに見ればそれ以下と考えるのが現実的です。
仮に保有率を「およそ5割」と置くと、24,242事業所のうち1万社を超える事業者が、まだ自分のホームページを持っていないという計算になります。もちろんこれは幅のある概算で、数え方(事業所単位か企業単位か)や業種によって上下します。それでも「鳥取ではHPを持たない事業者がまだ相当数いる」という方向性は、まず動かないと思います。
鳥取県「令和3年経済センサス-活動調査(鳥取県の概要)」(民営事業所数 24,242か所)
中小企業庁「2024年版中小企業白書 付属統計資料」ほか(小規模事業者数 285.3万、全事業者の84.5%)
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「持っていない側」でいることの、これからのコスト
ここで大事なのは、「保有率が低いなら、まだ持たなくていい」という話にはならない、ということです。むしろ逆で、まだ半分近くが持っていない今だからこそ、差がつきやすい局面だと私は考えています。
理由はいくつかあります。ひとつは、検索行動の変化です。「鳥取 ◯◯(業種)」で調べたとき、ホームページがある事業者は候補として見つけてもらえますが、ない事業者はそもそも土俵に上がれません。SNSは流れて消えていく一方で、営業時間・サービス内容・料金・実績といった「確認したい情報」を整理して置いておけるのは、やはり自分のホームページです。
もうひとつは、信頼の確認手段としての役割です。取引先や新しいお客さんが「この会社、大丈夫かな」と思ったとき、まず社名で検索します。そこで公式の情報が何も出てこないのと、きちんと整った1ページがあるのとでは、受け取られ方が変わります。特にBtoBや、初めての相手との取引では、この差は小さくありません。
このテーマは取引先の信頼を得るホームページの役割で、もう少し詳しく取り上げています。
採用の場面でも同じです。求人を見た人が会社名を調べて何も出てこないと、応募をためらう理由になり得ます。人手不足が続く鳥取では、ここも見過ごせないポイントです。
なお、「HPを作れば必ず売上が上がる」といった保証をするつもりはありません。作っただけで放置すれば効果は限られます。ただ、「持っていないことで、見つけてもらえない・確認してもらえない機会を静かに逃し続けている」——このコストは、数字に出にくいぶん見落とされがちだと感じています。
鳥取の事業者が、今からHPを持つなら押さえたい3つの考え方
最後に、これから用意する場合に私がお伝えしている考え方を、3つに絞ってまとめます。
1. 「立派なサイト」より「確認できるサイト」から始める
最初から凝ったものを目指す必要はありません。事業内容・強み・連絡先・場所・営業時間が整理された数ページがあるだけで、「検索して確認できる状態」は作れます。まずはここが土台です。
2. 更新できる範囲で持つ
未導入理由に「管理・更新への不安」があったように、続けられない仕組みだと結局止まります。自分やスタッフが無理なく手を入れられる作りにしておくことが、長い目で見て効いてきます。
3. 「誰に見つけてほしいか」を先に決める
新規のお客さんなのか、取引先なのか、採用なのか。目的によって、載せるべき情報も、力を入れる場所も変わります。ここが曖昧なまま作ると、ぼんやりしたサイトになりがちです。
鳥取という土地は、事業者の数がそこまで多くないぶん、一つひとつの事業者がきちんと情報を出しているかどうかが、かえって目立ちます。まだ半分が持っていない今は、丁寧に整えるだけで頭ひとつ抜けやすいタイミングだと思います。
「そもそも個人事業主にホームページは必要か」という根本の問いについては、こちらの記事でも整理しています。
Own.では、鳥取の小規模事業者向けに、この「確認できるサイト」を無理のない形で用意するお手伝いをしています。自社の状況に照らして相談してみたい方は、Web制作のサービス案内もあわせてご覧ください。
※本記事のうち「鳥取の実質保有率」に関する数値は、公表された全国統計を鳥取県の事業所構成に当てはめた私(Own.)の推計です。鳥取県が実施・公表した保有率調査ではありません。引用した統計値は各見出し末尾の出典をご確認ください。
よくある質問
私が調べた限り、鳥取県が公式に発表した保有率調査は見当たりません。この記事の「鳥取の実質保有率」は、全国統計を鳥取県の事業所構成に当てはめた推計であり、鳥取県が実施した調査ではない点にご注意ください。
よく引用される93.2%という数字は、総務省の調査対象が「常用雇用者100人以上の企業」に限られているためです。鳥取に多い従業員数人規模の事業者は、この母集団にほとんど含まれていません。
民間調査では「固定の顧客・取引先しかいない」という回答がもっとも多く、費用面や更新・管理への不安も理由に挙がっています。今の商売が回っていれば必要性を感じにくい、という背景があると考えられます。
最初から凝ったサイトを目指す必要はありません。事業内容・強み・連絡先・場所・営業時間が整理された数ページから始めるだけで、「検索して確認できる状態」は作れます。
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